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ブラックリストの影響(クレジットスコア・家賃・就職など)
ブログの更新ペースが速くなった司法書士の高柳です。
前回に続いて信用情報機関の話です。
信用情報機関はブラックリストということで恐れられていますが、結局のところお金を借りる時に影響があるだけで他の社会生活には影響がありません。
なお、アメリカの場合、このあたりの事情は大分異なるようです。
アメリカにも信用情報機関があり、クレジットヒストリー(取引記録)を管理しています。違うのはここからで、アメリカの信用情報機関はクレジットヒストリーを元にクレジットスコアという偏差値によるポイントをつけています。クレジットスコアは借入れだけでなく、就職や賃貸借契約など社会生活に影響があります。
クレジットスコアの評価が良い人たちはプライム層と呼ばれ、信用力の高い人たちです。リスクプレミアムが少なくてすむことから預金金利は高く借入金利は低くなり、また、就職や賃貸借契約の際も有利になります。一方評価が悪い人たちはサブプライム層と呼ばれています。こちらは信用力が弱いという判定の人たちです。プライムとは逆に借入れ金利は高くなり、就職や賃貸借契約も不利になります。ちょっと前に騒ぎになったサブプライムローン問題というのは、スコアの低いサブプライム層対象の住宅ローンのことなんですね。信用力が低い層対象のサブプライムローンを集めて、金融技術を使って高い格付けにした証券として売っていたのですが、元々信用力が低いので住宅ローンがある程度焦げ付くことは想定内でした。その場合は不動産を差し押さえて貸し金を回収すれば問題無いはずだったのですが、住宅バブルが弾けて価格が下落してしまいお金が回収できなくなってしまったのです。不動産価格が上がり続ければ問題無かったはずだったんですが・・・何だか昔の日本でも同じような話がありましたね。
しかし、精密なデータベースを作り、最新の金融技術を駆使して貸し出して、結局失敗して不良債権問題で苦しんでいる様子を見るとなんともいえない気持ちになります。金融や通信技術が発達したためにアメリカだけでなく、問題が世界中に広がってしまいました。
クレジットスコアによって生涯で払う金利が大違いになるなど社会生活への影響が大きいのでアメリカの人たちは自分のクレジットスコアを高くするのに大変な労力を割いているようです。
さて日本の信用情報機関に話しを戻します。日本の信用情報機関は金融情報のデータベースに用途は限定されていて、賃貸借契約のために大家さんや不動産仲介会社がデータにアクセスすることはできません。
家賃については全国賃貸保証業協会が滞納情報などのデータを管理しています。
これは家賃保証会社を立てて契約した場合のみ対象なので、家賃保証会社が関与していない賃貸借契約の滞納情報のデータベースは今のところ無いようです。ただ、貸す側としてはきちんと家賃を支払ってくれそうな人に貸したいと考えるのは当然なので、いずれは賃貸借契約全部をカバーするようなデータベースが実現するような気がします。
滞納常習者が借りられなくなるという理由でこういうデータベース構築に反対する向きもありますが、逆にきちんと家賃を払っている人は借り易くなります。ミスで一回滞納した人も常習滞納者として扱われる恐れがあるとの批判がありますが、この心配ははっきりいって杞憂でしょう。厳しく運用して契約を断って空室ばかりになったら、最終的に困るのは貸し手なのです。部屋を貸して家賃をもらう商売なので厳しすぎる運用は自分の首を絞めるだけです。借金だって一度支払いが遅れただけでは、信用情報機関には載らない取り扱いです。一度の遅れで弾いていたら貸せる相手が少なくなりすぎるからでしょう。
こういうデータベースは誰かを苦しめるために作るのではなく、情報の非対称性を小さくして契約・取引を円滑に行うために作るのです。家賃滞納のデータベースが充実すると、大家さんは貸すべき相手を見つけやすくなり、優良店子にはリスクプレミアムを乗せなくて済むのできちんと家賃を払っていた人は有利な条件で借りることができます。一方常習滞納者は通常家賃にリスクプレミアムがつけられたり敷金・礼金を優良者より多く要求されることになると思われます。こうなってはいかんというのが反対している人たちの主張なのですが、私はこれの何が悪いのかよくわかりません。
契約自由の大原則がありますから常習滞納者に貸さなければいけない義務は貸し手にはありませんし、滞納された場合に損害をこうむるのは貸し手であることを考慮する必要があります。滞納を繰り返して部屋を借りられなくなる人が出るかもしれませんが、それは貸し手の犠牲で解決すべき問題では無いでしょう。そもそも借地借家法の借り手保護が強すぎるので、貸し手から契約解除をすることは容易ではありません。簡単に解除できないのであれば、トラブルを起こさず確実な家賃支払いをしてくれそうな人に貸したいと考えるのは当然だと思います。
大家さんもローンを払いながら賃貸経営していることが普通なので滞納が増えると事業が破綻してしまいます。滞納が溜まり裁判を起こして強制執行により建物明渡をさせるとなると最低でも実費だけで数十万円はかかります。滞納家賃の回収はできないことが多いので、滞納家賃を諦めたうえで裁判費用として相当な費用を負担することになります。まさに踏んだり蹴ったりです。「何年も滞納されているので何とかならないか」という相談を受けることもあるのですが、最終的に家賃を踏み倒されたうえに裁判手続き費用の負担が発生することになるという説明をすると理不尽さに怒り出す人がいたり、費用負担ができず諦めてしまう人もいます。
私が弱い立場の支援をしているという人たちに基本的に懐疑的なのは、弱い立場の人を守るために発生するコストを誰が負担するかを全く考えてないように思われるからです。
最後に就職に信用情報機関の記録が影響するかですが、日本では会社などが採用しようとしている人のクレジットヒストリーを直接請求することはできませんから影響は無いです。また、企業は新卒一括採用が基本なので、卒業時点で借金がある人はあまりいませんから手間をかけてまで確認する必要は感じていないのでは無いでしょうか。今後、採用慣行が変わって転職・中途採用が増えるようだと、ひょっとするとクレジットヒストリーを自分で取り寄せて開示するよう要求する企業がでてくるかもしれませんね。
なお、民間の信用情報機関以外の借金に関するデータベースとして官報があります。信用情報機関と違い延滞や債務見直しは載りませんが、破産や民事再生をした人は氏名住所つきで記載されます。もっとも官報は公開資料なので誰でも見ることは可能です。もっとも普通の生活をしている方が官報を見ることはまず無いと思われます。
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前回に続いて信用情報機関の話です。
信用情報機関はブラックリストということで恐れられていますが、結局のところお金を借りる時に影響があるだけで他の社会生活には影響がありません。
なお、アメリカの場合、このあたりの事情は大分異なるようです。
アメリカにも信用情報機関があり、クレジットヒストリー(取引記録)を管理しています。違うのはここからで、アメリカの信用情報機関はクレジットヒストリーを元にクレジットスコアという偏差値によるポイントをつけています。クレジットスコアは借入れだけでなく、就職や賃貸借契約など社会生活に影響があります。
クレジットスコアの評価が良い人たちはプライム層と呼ばれ、信用力の高い人たちです。リスクプレミアムが少なくてすむことから預金金利は高く借入金利は低くなり、また、就職や賃貸借契約の際も有利になります。一方評価が悪い人たちはサブプライム層と呼ばれています。こちらは信用力が弱いという判定の人たちです。プライムとは逆に借入れ金利は高くなり、就職や賃貸借契約も不利になります。ちょっと前に騒ぎになったサブプライムローン問題というのは、スコアの低いサブプライム層対象の住宅ローンのことなんですね。信用力が低い層対象のサブプライムローンを集めて、金融技術を使って高い格付けにした証券として売っていたのですが、元々信用力が低いので住宅ローンがある程度焦げ付くことは想定内でした。その場合は不動産を差し押さえて貸し金を回収すれば問題無いはずだったのですが、住宅バブルが弾けて価格が下落してしまいお金が回収できなくなってしまったのです。不動産価格が上がり続ければ問題無かったはずだったんですが・・・何だか昔の日本でも同じような話がありましたね。
しかし、精密なデータベースを作り、最新の金融技術を駆使して貸し出して、結局失敗して不良債権問題で苦しんでいる様子を見るとなんともいえない気持ちになります。金融や通信技術が発達したためにアメリカだけでなく、問題が世界中に広がってしまいました。
クレジットスコアによって生涯で払う金利が大違いになるなど社会生活への影響が大きいのでアメリカの人たちは自分のクレジットスコアを高くするのに大変な労力を割いているようです。
さて日本の信用情報機関に話しを戻します。日本の信用情報機関は金融情報のデータベースに用途は限定されていて、賃貸借契約のために大家さんや不動産仲介会社がデータにアクセスすることはできません。
家賃については全国賃貸保証業協会が滞納情報などのデータを管理しています。
これは家賃保証会社を立てて契約した場合のみ対象なので、家賃保証会社が関与していない賃貸借契約の滞納情報のデータベースは今のところ無いようです。ただ、貸す側としてはきちんと家賃を支払ってくれそうな人に貸したいと考えるのは当然なので、いずれは賃貸借契約全部をカバーするようなデータベースが実現するような気がします。
滞納常習者が借りられなくなるという理由でこういうデータベース構築に反対する向きもありますが、逆にきちんと家賃を払っている人は借り易くなります。ミスで一回滞納した人も常習滞納者として扱われる恐れがあるとの批判がありますが、この心配ははっきりいって杞憂でしょう。厳しく運用して契約を断って空室ばかりになったら、最終的に困るのは貸し手なのです。部屋を貸して家賃をもらう商売なので厳しすぎる運用は自分の首を絞めるだけです。借金だって一度支払いが遅れただけでは、信用情報機関には載らない取り扱いです。一度の遅れで弾いていたら貸せる相手が少なくなりすぎるからでしょう。
こういうデータベースは誰かを苦しめるために作るのではなく、情報の非対称性を小さくして契約・取引を円滑に行うために作るのです。家賃滞納のデータベースが充実すると、大家さんは貸すべき相手を見つけやすくなり、優良店子にはリスクプレミアムを乗せなくて済むのできちんと家賃を払っていた人は有利な条件で借りることができます。一方常習滞納者は通常家賃にリスクプレミアムがつけられたり敷金・礼金を優良者より多く要求されることになると思われます。こうなってはいかんというのが反対している人たちの主張なのですが、私はこれの何が悪いのかよくわかりません。
契約自由の大原則がありますから常習滞納者に貸さなければいけない義務は貸し手にはありませんし、滞納された場合に損害をこうむるのは貸し手であることを考慮する必要があります。滞納を繰り返して部屋を借りられなくなる人が出るかもしれませんが、それは貸し手の犠牲で解決すべき問題では無いでしょう。そもそも借地借家法の借り手保護が強すぎるので、貸し手から契約解除をすることは容易ではありません。簡単に解除できないのであれば、トラブルを起こさず確実な家賃支払いをしてくれそうな人に貸したいと考えるのは当然だと思います。
大家さんもローンを払いながら賃貸経営していることが普通なので滞納が増えると事業が破綻してしまいます。滞納が溜まり裁判を起こして強制執行により建物明渡をさせるとなると最低でも実費だけで数十万円はかかります。滞納家賃の回収はできないことが多いので、滞納家賃を諦めたうえで裁判費用として相当な費用を負担することになります。まさに踏んだり蹴ったりです。「何年も滞納されているので何とかならないか」という相談を受けることもあるのですが、最終的に家賃を踏み倒されたうえに裁判手続き費用の負担が発生することになるという説明をすると理不尽さに怒り出す人がいたり、費用負担ができず諦めてしまう人もいます。
私が弱い立場の支援をしているという人たちに基本的に懐疑的なのは、弱い立場の人を守るために発生するコストを誰が負担するかを全く考えてないように思われるからです。
最後に就職に信用情報機関の記録が影響するかですが、日本では会社などが採用しようとしている人のクレジットヒストリーを直接請求することはできませんから影響は無いです。また、企業は新卒一括採用が基本なので、卒業時点で借金がある人はあまりいませんから手間をかけてまで確認する必要は感じていないのでは無いでしょうか。今後、採用慣行が変わって転職・中途採用が増えるようだと、ひょっとするとクレジットヒストリーを自分で取り寄せて開示するよう要求する企業がでてくるかもしれませんね。
なお、民間の信用情報機関以外の借金に関するデータベースとして官報があります。信用情報機関と違い延滞や債務見直しは載りませんが、破産や民事再生をした人は氏名住所つきで記載されます。もっとも官報は公開資料なので誰でも見ることは可能です。もっとも普通の生活をしている方が官報を見ることはまず無いと思われます。
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2014-12-25(Thu)